がん幹細胞を可視化・抑制する新物質

三重大大学院医学系研究科の研究チームが、がんのもとになる「がん幹細胞」に取り付いて可視化する物質を見つけたと、英科学誌電子版に発表しました。この物質は発光する特性を持ち、がん幹細胞が集中する箇所が見えるようになる上、増殖抑制作用も認められ、効果的ながん治療法の開発が期待されるということです。

がん幹細胞は、がん細胞の中に存在し、再発や転移の主な原因とされています。極めて少数しか存在せず、発見が難しい上、抗がん剤も効きにくいことが特徴です。今回発表された物質は発光するだけでなく、がん幹細胞の増殖を抑え死滅に導く効果も期待できるそうです。

参考:北海道新聞

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/health/health/1-0121853.html

見えないがん細胞も叩く次世代の治療機器(ホウ素中性子捕捉療法)


近年、がんの放射線治療ではさまざまな技術が開発されています。X線やγ線は直線の光線が体内を通過しながら、がんのかたまりを破壊し、陽子線や重粒子線は、粒子をがんのかたまりに当てて死滅させます。ただし、いずれも画像に映る腫瘍は狙い撃ちにできても、周辺の見えないがん細胞までターゲットにはできません。

また、従来の放射線治療では、正常な細胞にも少なからずダメージを与えるため、治療できる回数には制約があります。そんなデメリットを克服する次世代のがん治療として、国内外から期待を集めているのが「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」です。がん細胞だけが取り込むホウ素に対し、体外から照射した中性子が反応することで、がん細胞だけを破壊します。

従来の放射線とは仕組みが異なり、見えないがん細胞も捉えることができる治療法です。現在、筑波大学陽子線医学利用研究センターが、産学官共同プロジェクトで最先端のBNCT機器を開発しています。かつては研究用原子炉で研究が進められていましたが、それとは異なる加速器による新しい機器が誕生しつつあるそうです。

陽子線や重粒子線は、粒子の力を発揮させるための機器が大がかりで、広い面積の敷地が必要ですが、BNCTはこれらの4分の1以下のスペースに入る大きさです。また、従来の放射線治療は、複数回の照射が必要だったが、BNCTは、たった1回の治療で効果を得られるのも利点となります。

参考:zakzak

http://www.zakzak.co.jp/health/doctor/news/20150401/dct1504010830001-n1.htm


がん治療薬を効率的に取り込ませる微小粒子


大阪大の研究グループが、がんに薬を効率的に取り込ませる10ナノメートル(ナノは10億分の1)の微小粒子の開発に成功したと4日に発表しました。細胞死を引き起こすRNA(リボ核酸)の一種を使った実験で、副作用なくマウスのがんの増殖を抑えられたということです。この研究に関する論文は5日、米国のオンライン科学誌プロスワンに掲載されるそうです。

RNAの一種「siRNA」は特定の遺伝子を働かないようにでき、新世代の抗がん剤として注目されています。しかし、血中では分解されやすいために注射では使用することができず、がん細胞まで運ぶ方法の開発が求められていました。また、これまで開発された粒子は大きさの面から、運ぶ効率が悪かったという課題があったそうです。

阪大の山本浩文准教授(消化器外科学)らのグループは、siRNAにカルシウムとリン酸、炭酸を混ぜて塊にし、超音波で砕いて10ナノの球状の粒子にすることに成功したとのことです。血中で分解されにくくなり、がん細胞が増殖しているマウスに週3回注射すると、18日目には、がんの大きさが従来の方法の3分の1に抑えられたそうです。

山本准教授によると、がんの近くの血管は、壁に隙間(すきま)が多く、微小粒子が漏れ出てがんに達しやすいそうです。研究グループは、効率のよさから、粒子を「スーパーアパタイト」と名付けています。山本准教授は「大型動物や人でも使えるか調べる必要がある」と話しています。

参考:毎日新聞

http://mainichi.jp/select/news/20150305k0000m040139000c.html


がん免疫療法の臨床試験の手引案がまとめられました。


専門家による検討委員会が免疫の力を利用してがんを攻撃する免疫療法の開発を進めることを目的とした臨床試験(治験)の手引案をまとめました。免疫療法は腫瘍(しゅよう)が小さくならなくても生存期間が延びる場合があるなどと言われており、その特性に合わせた有効性や安全性の評価の指針が示されているそうです。厚生労働省はこの手引案をもとに国の指針をつくり、実用化を促すとのことです。

免疫療法は手術、抗がん剤、放射線に次ぐ第4の治療法として期待されています。免疫細胞を注入する治療法や、がん細胞特有の目印を利用するワクチン療法、免疫のブレーキを解除する治療法などが研究されています。

しかし、がんを直接攻撃する抗がん剤とは作用が異なり、腫瘍がどれくらい縮小したかなどでみる従来の評価法では効果の判定が難しい場合があります。また、免疫細胞が増殖して体内に長い間とどまることもあり、通常の薬とは副作用の出方が異なる可能性もあるそうです。一言で免疫療法と言っても、現在は数多くの種類が存在しますので、この手引案により明確な指針が打ち出されることが期待されます。

参考:朝日新聞

http://www.asahi.com/articles/ASH1963DLH19ULBJ017.html


新たな照射技術を搭載した陽子線治療システム


2014年10月23日、日立製作所は動体追跡照射技術を適用した「陽子線治療システム PROBEAT-RT」が、薬事法に基づく医療機器の製造販売承認を取得したと発表がありました。2010年に国家プロジェクト「最先端研究開発支援プログラム」の採択を受け、北海道大学と共同開発を進めていたそうで、今年度中に動体追跡照射技術を適用したシステムでの治療を同大学で開始するそうです。

陽子線によるがん治療は、水素の原子核である陽子を加速器で高速に加速し、腫瘍に集中して照射することでがんを治療する放射線治療の1つです。脳の腫瘍など、動かない部位では集中して照射するピンポイントの治療が可能ですが、肺・肝臓などの体幹部の腫瘍は呼吸などで位置が変動するため、腫瘍位置をリアルタイムで捉えて正確に陽子線を照射する技術が求められてきました。

今回承認されたPROBEAT-RTは、北大の動体追跡照射技術と日立のスポットスキャニング照射技術を組み合わせたものだそうです。2014年3月に承認を取得したスポットスキャニング照射技術を搭載した陽子線治療システムに、動体追跡照射技術を組み合わせることで、呼吸などで位置が変動する腫瘍でも、高精度な陽子線の照射を実現しており、正常部位への照射も大幅に減らせるということです。


中性子を照射する「頭頸部がん」の臨床試験


放射線を使った次世代のがん治療法「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)で、喉頭がんや舌がんといった「頭(とう)頸(けい)部がん」に対する世界初の治験(臨床試験)が、川崎医科大(岡山県倉敷市)と京都大原子炉実験所(大阪府熊取町)で始まりました。

この治療法は、がん細胞を狙い撃ちするため、従来の放射線治療に比べて副作用が少ないとされています。早ければ5年程度で薬事法上の承認を受け、実用化したい考えです。

具体的には、点滴でがん細胞にホウ素を取り込ませ、そこに弱い中性子線を当てます。するとホウ素が崩壊して放射線を発し、がんを内側から破壊するという仕組みになっています。放射線は細胞一つ分程度しか広がらないため、正常な細胞は傷つけにくく、副作用が少ないと期待されています。

頭頸部がんは、手術で切除すると会話や食事に支障が出ることもあり、放射線治療を選ぶ患者さんがたくさんいらっしゃいます。ただし従来の方法では正常な細胞も傷つけてしまい、皮膚がただれるなどの副作用が懸念されます。BNCTの臨床研究では、通常がん細胞の減少を確認するために1ヵ月程度かかるところを、2、3日に短縮できるとの成果もみられるといいます。

新たな治療法の開発として、この臨床試験には多くの期待が込められています。


福井県立病院で開始される乳がんに対する陽子線治療の臨床試験


福井県立病院の陽子線がん治療センターは今秋以降をめどに、初期の乳がんを対象にした陽子線がん治療の臨床試験を始める予定です。乳がんの場合、常に同じ状態で患部を固定するのが難しく、照射する場所がずれるという課題がありましたが、ブラジャー型の固定具を開発したことで、それを克服しました。乳がんに対する陽子線臨床試験は、国内では初めてです。

初期の乳がんは手術するケースも多いのですが、乳房を切ることを嫌って治療を拒否する患者さんもいらっしゃいます。このため同センターは大手下着メーカーの協力を得て、2011年度から乳房を固定する技術研究を進めてきました。このほど、専用の固定具を開発し、うつぶせで治療するために胸部に穴の空いたベッドを導入しました。

乳がんの臨床試験では、3月に導入した陽子線を当てる位置をミリ単位で調整する「コンピューター断層撮影(CT)自動位置決めシステム」を活用。陽子線をうつぶせになった乳がん患者の下側から照射します。周辺の正常な組織への副作用は少なく、痛みもありません。

病院スタッフと外部有識者で構成する倫理委員会で承認が得られれば、臨床試験に入ります。2年間で18人の治療を見込んでおり、山本和高センター長は「手術と同程度の治療効果が得られるよう努力していきたい」と話しています。

陽子線による治療は初期の肺がんの場合、1回の治療時間は約30分(照射は1~2分)で10回程度行います。山本センター長によると、陽子線治療を受けた初期の肺がん患者の8~9割は、がん細胞が死ぬなどの効果があるとのこと。

2011年3月に開所した同センターは現在、肝臓、肺、前立腺、頭頸部(けいぶ)のがん治療を対象としています。患者さんの受け入れ数は2011年度は115人、2012年度は152人、2013年度は186人と年々伸びていおり、今後も患者さんの増加が期待されています。


埼玉県立がんセンターに新病棟


平成25年12月、埼玉県立がんセンターに「高度先進がん医療を実践する病院」と「日本一患者と家族にやさしい病院」という2つの特徴を持った新病院がオープンします。さらに東日本大震災を教訓に「災害対策及び省エネ、省CO2対策」も充実させ、ライフラインが止まっても医療が継続できる病院とし、また新病院の敷地には現有の自然林を最大限残しつつ、新たに造る駐車場や通路などにも数多くの植樹を行い、「森の中にある人にやさしい高度医療機関」を目指します。

がん治療に関しては、「手術による治療」・「抗がん剤による治療」・「放射線による治療」だけでなく、近年注目されている「粒子線治療」についても、近隣の治療施設(群馬県:群馬大学医学部附属病院重粒子線医学センター、茨城県:筑波大学附属病院陽子線医学利用研究センター、千葉県:独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院、独立行政法人国立がん研究センター東病院)と連携を取り合い、患者さんを紹介することによって可能となっています。(現在、埼玉県には粒子線治療施設がありません。)

他にも3大治療(集学的治療)の強化として、手術室を7室から12室に、放射線治療治療質を3室から4室に増設します。化学療法外来用ベッドも43床から60床に増床し、国内最大級の病床数となります。さらに緩和ケアの充実のために、緩和ケア病床を18床から36床に倍増させる計画になっています。

また明るく開放的な空間を提供すること、ボランティアによる心のケアの充実させること等により、日本一患者と家族にやさしい病院を実現します。


リンパ浮腫の「複合的理学療法」


「複合的理学療法」(Complex Physical Therapy)は、リンパ浮腫に対する保存的な療法です。医学的に検証された4つの主要素「スキンケア、医療リンパドレナージ、圧迫療法、運動療法」を個別の症状に応じて実施し、セルフケア指導(患肢挙上、生活リスク管理など)により奏功効果を生み出します。

①スキンケア治療開始前に治療がすぐに始めることができるかどうか判断をするために、皮膚の状態を把握(スキンチェック)します。 また日常生活でも皮膚を清潔に保ち、保湿を心がけることがポイントになります。                       

②医療リンパドレナージ

細胞のすきまに過剰に滞っている組織液やリンパ液を専門的なマッサージ技術により、健康なリンパ管へ誘導してむくみを改善させることができます。

③圧迫療法

医療リンパドレナージにより改善された皮膚のやわらかく良好な状態を維持し、さらに組織液・リンパ液の排液を促すために行います。むくみの状態によって、弾性包帯を巻いて圧迫をする方法と、適切な弾性着衣(弾性スリーブ・弾性ストッキングなど)を着用する方法を上手に組み合わせて行います。

④排液効果を高める圧迫下での運動療法

弾性包帯・弾性着衣により患肢を圧迫した状態で、筋ポンプ作用を活かして効果的に組織液やリンパ液の流れを促す運動を行います。

適切な治療を受けることにより症状の改善が促され、精神的・肉体的苦痛が和らぎ、QOL(生活の質)の向上につながります。「複合的理学療法」は欧州において確立され、1995年より国際リンパ学会において標準治療として認められています。わが国では、1990年代後半より徐々に普及し始め、全国的に広がりをみせています。