がんの「光線力学的診断」


「光線力学的診断」とは、がんに親和性を有する蛍光試薬を内服し、がん組織に選択的に蓄積させた後、特定波長の光を照射して発せられる蛍光色を観察することによって、がんの部位を特定する診断方法です。「光線力学的診断」は簡便で診断時間も短く、さらに生体侵襲性が少ない診断方法として注目されています。

根の浅い表在性膀胱がんは、経尿道的内視鏡手術 (TUR-Bt)によって切除可能で、5年生存率も90%以上と予後良好です。しかし、術後の膀胱内再発が50~70%以上と高いのが問題です。特に、手術時に通常の膀胱鏡では確認することが困難な小さながん、平坦ながんや前がん病変の残存が、術後早期の膀胱内再発に大きく関与することが知られており、治療成績の向上にはその確認困難な病変の正確な同定が大きな鍵になります。この問題を解決するのが「光線力学的診断」です。

「光線力学的診断」は、欧州では臨床試験での良好な成績をもとに医療承認され、European Association of Urology (EAU)のガイドラインにおいて膀胱がんの診断に推奨されています。具体的には、手術前に光感受性物質 (アミノレブリン酸(ALA)溶液)を内服または尿道内にカテーテルを用いて膀胱に注入します。がんや前がん病変は、この光感受性物質を特異的に取り込み、青色光をあてると赤色蛍光として発光します。麻酔をかけて、蛍光膀胱鏡による観察下にその蛍光部位を切除することで、より精度の高い治療効果が得られます。この診断・治療で使用するALAという光感受性物質は現在のところ薬事未承認ですが、欧米や国内の多くの施設で使用され、重篤な副作用は認めていません。

「光線力学的診断」は、安全かつ有意に膀胱がんの再発予防に寄与し、がん再発に苦脳する患者さんにとってメリットの大きな診断方法になると考えられます。


大阪医大式膀胱温存療法

表在性(非筋層浸潤型)膀胱腫瘍の治療は内視鏡手術の技術革新とともに飛躍的に進歩し、現在では患者様のほとんどが、内視鏡による経尿道的手術にて良好な治療効果を得られています。しかし、腫瘍が筋層内に浸潤する浸潤性膀胱癌では、膀胱を摘除する、“根治的膀胱全摘術”が標準治療となっています。

膀胱は、蓄尿と排泄という重要な機能を担っている臓器であり、体内に1つしか存在しないため、膀胱を摘除すると、通常術後ストーマ(人口膀胱)設置を余儀なくされ、患者のQOLは著しく低下します。また、こうしたリスクとQOLの低下を覚悟して膀胱全摘術を施行しても、術後局所再発やリンパ節転移や、肺などへの遠隔転移をきたす症例が少なくなく、浸潤性膀胱癌患者全体の約50%が死亡するのが現状です。 これらの状況から、膀胱摘除を行わずに治療する“膀胱温存療法”を開発することは、浸潤性膀胱癌に対する治療において非常に重要であると考えられます。

大阪医大では放射線科の先生方と協力のもと、バルーン塞栓動脈内抗癌剤投与法(BOAI)によるシスプラチン投与と血液透析とを併用する「大阪医大式膀胱温存療法 “OMC-regimen”」 を15年前から開発し、これまで多くの浸潤性膀胱癌の患者様を膀胱摘除することなく根治に導いています。

「大阪医大式膀胱温存療法」は、1)血流塞栓用バルーンが付属したカテーテルを用いて、血流遮断+抗癌剤の動脈内注入を行うことによって、腫瘍細胞は低酸素状態となり、静脈内投与に比較して約30倍以上の高濃度の抗癌剤を腫瘍部位に局所的に送達されるため、極めて高い殺細胞効果が発現し、2)また、同時に内腸骨静脈内に設置した透析用カテーテルを通して膀胱潅流後の非蛋白結合型シスプラチン(分子量約300で、クレアチニンと同程度であるため血液透析で除去できる)を透析膜を通して濾過することによって(約9割を除去可能)、全身の副作用を殆ど認めず、3)さらに膀胱局所に放射線治療を加えることによって、高い放射線増感作用を有する高濃度の シスプラチンとの相互作用により極めて高い殺細胞効果がもたらされ、高齢者や全身状態その他の理由で通常であれば根治が望めない患者に対しても根治の可能性をもたらす画期的な治療法です。

大阪医大ではこれまで、120例以上の患者様にこの治療法を施行し、組織タイプが尿路上皮癌である局所膀胱浸潤癌では90%以上の患者様に根治が誘導され、根治が誘導された患者様では、最長14年の観察期間を経てほとんどの方が再発、転移を認めず元気に生活されています。

なお「大阪医大式膀胱温存療法」は先進医療に認定されています。


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